沖縄

 

君たちの 

 蟹とたわむる 

肩越しに 碧き海原 

果つることなく

 

さざなみの 珊瑚の浜に 雲しろく 君が足あと 碧き海まで

 

風凪いで 海もまどろむ 昼下がり 珈琲かおる 見晴らしの丘

 

パパイアの 濡れて緑が したたりぬ 珊瑚の島の 雨宿りかな

 

城跡の 夕暮れ近き 石積みに 咲く花揺らす 海からの風

 

 

木洩れ日のゆれるテーブルに

まどろむような時が置かれる

水平線は曖昧に空と重なり

海からの涼やかな風に言葉が途切れる

午後の日差しは木々の枝先からこぼれ

ハイビスカスが海に浮かぶ

珈琲の香りがただよう庭先に

夏の名残が彩る本部の丘

 

 

放課後

 

いつものように、廊下の窓辺から

あなたはフルートを奏でる

深まりゆく秋の空へ

その音色はドアをすり抜けて

書架の間をハミングしていく

不揃いの背表紙に語りかけるように

長い日差しはベランダの手すりを越え

橙色の木漏れ日模様がゆらめいて

書架の間に重なり合う小さな陽だまり

時計の針はのんびりと時を刻んでいる

閲覧室の午後3時過ぎ

晩秋

 

柿の実を ついばむ鳥の 影長く 羽ふるわして 枯葉まい散る

 

道すがら つぶやく言葉 さまよいし 柿の実ふたつ 野辺の夕暮れ

 

やわらかき 夕日に染まる 柿の実の 陰映したる 白壁の路

あきあかね

 

君たちの残したざわめきの余韻に

書架の溜息がここかしこ

積まれた本に、カウンターも不機嫌そう

ふと配架の手を止めて、

窓の外には秋茜

屋上の手すりの向こうに、雲が白い列をなし

東京のノッポのビルが、墨色の棒グラフ

教室のすりガラスに浮かぶ影法師

うなずき合うふたつみつ

体育館の時折聞こえる歓声は

グランド超えて街角に消えていく

秋の日

佇む

暮れていく空に

身動ぎもせず 

何時までそうしているつもり

夕日が丸く 君の肩越しに

帳を告げようとしているのに

 

恥ずかしがりや

あなたの視線がちょっと振り返る

閉じたまつ毛に隠れているあなたの本心

もう一歩前に出てみればきっと違った時が流れるのに

 

真夏の閲覧室

開け放たれた窓を吹き抜ける風に

木々のこずえは涼しげな緑色の音色を手渡し

蝉の鳴き声が閲覧室をすり抜けていく

入道雲の山並みに窓は占められ

真夏の陽光は体育館の屋根にきらめき

校庭の生徒らの声が耳をくすぐる

頁を繰る音だけの閲覧室に

時は静かにに積み重ねられ

本を抱えた書架は夏を耐えている