真夏の閲覧室

開け放たれた窓を吹き抜ける風に

木々のこずえは涼しげな緑色の音色を手渡し

蝉の鳴き声が閲覧室をすり抜けていく

入道雲の山並みに窓は占められ

真夏の陽光は体育館の屋根にきらめき

校庭の生徒らの声が耳をくすぐる

頁を繰る音だけの閲覧室に

時は静かにに積み重ねられ

本を抱えた書架は夏を耐えている

夏休み

 

真っ白な夏雲が窓枠いっぱいを占め

生徒たちの語り合う声が消えた閲覧室

校庭からの、とぎれとぎれの歓声と

テニスボールを打つ音が忍び込む

甍を吹き抜けてきた南からの風

放たれた窓から体育館の屋根へ吹き抜け

夕日がベランダのコンクリートから跳ね返り

校舎の壁に映し出す木漏れ日模様

列を乱した机が黙りこくっている教室に

所在無げに鳴り響く終業のチャイム

まるい午後

 

ざわめきの去った閲覧室

ソファーでうたた寝をしている、

  忘れられたペンケース

ガラス越しの空は

校舎の壁に幾何学模様に切り取られ

その前を綿雲がのろのろと通り過ぎていく

 放課後の校舎は声をひそめ

だんだんと澱んでいく時が

切れ切れに積み重なって

ふぅっと心が浮かび上がりそうになり

      グラビアのインクの囁きだけが部屋に満ちていく