つぶやき

「意味が必要なんだ」とつぶやいた

君のまなざしに

そっぽを向いたその書架は

願いも企みも透明にしてしまうのです

 今という境遇にまとわりつかれて

未来なんて都合の良いフレーズに逃げ込んでも

図書室の窓辺には溜息が積もっています

 窓の外、雨の路地裏では

愛も真理も水溜りになって

安堵と倦怠はフラワーポットの雫です

どうにもならないことだらけの朝

  前後三メートルの君の世界

世界

夢のような世界とあなたは言うけれど

夢ではない世界があるのでしょうか

遠い日の思い出は日記に綴られたインクのにじみ

心に留めたはずの大切な記憶も

やがて歳月の流れに溶けこんでしまう

私たちが視た瞬間だけ表情を創る世界

そんな世界に私たちは生きているのですから

思い出されることさえなく消えていった

所作や振る舞いに生きているのですから