通い路

朝日こぼれるいつもの小路

沙羅の花咲くその角に

「幸」という天秤の目盛りが刻まれ

通り過ぎるだけの私が計られる 

 偶然の積み重ねでしかない

私と云う神話が語られても

思い出にさえならない

  なりわいの軽さに

ふと振り返ってみれば

茫漠とした記憶の断片が

風に舞っているだけ

あなたへ

「わかった」と云うことが共有され

創られるこの世界 

いつも 

隠された、「孤立」という本質を背負っています

約束事は約束事ですから

あなたの感性はその儚さを知っています

語ることのできない「生きること」の深さを感じているから

とまどい 迷い 悩み 傷つき涙するのです

「信じる」というわけのわからなさに

依拠するしかない不思議な世界に

私たちはたちあっているのです

この風に水無月の香りをのせて

ブナの木漏れ日が足元にゆらめき

静けさに包まれた山路に私の息づかいだけが繰り返される

いわかがみ、すみれや白根葵の花に息を整える

風に乗り散りばめられた朱や白い花びらに

ふと、目を上げると

うつぎやつつじの花が梢の先で揺れている

尾根の路には人影もなく鈴の音が冴える

残雪の谷から吹き上げる風に木々はざわめき

遥かな山々のうねりは緑の海原

さざ波のように

白神の森は今緑を深めている

舞姫

 

  あなたは、美しく、美しくなった

   仄暗い心の回廊に灯をともすため

生きるということの輝きが欲しかった

     少女という時に

 

 夢の輪郭はとてもおぼろげなのに

その表情は

艶やかな彩にあふれている

万華鏡をのぞいた時のように

 

  めくるめく時の流れのなかで

 ふと足を止めて振り返ってみると

衣擦れと残り香の佇まいが

 セピア色にたたまれている

 

  人の世は包みようのない

不思議な形をしていて

人の心は忽ちに移ろい

解けない暗号が散りばめられている

 

 季節を重ねて紡いだ糸を

心を込めて織り上げても

思い通りの模様は浮かばない

 

  あなたは

「孤独」と云う同伴者に誘われながらも

あなたのために、

あなたとして、明日を描いていく

 

 

逍遥

 

   梢を渡る風に小雪が舞い

枯葉が敷き詰められた山路に

 小鳥の囀りさえ遠のく

冬の兆しにつつまれて

白神の森にひとり佇む

                                       

沖縄

 

君たちの 

 蟹とたわむる 

肩越しに 碧き海原 

果つることなく

 

さざなみの 珊瑚の浜に 雲しろく 君が足あと 碧き海まで

 

風凪いで 海もまどろむ 昼下がり 珈琲かおる 見晴らしの丘

 

パパイアの 濡れて緑が したたりぬ 珊瑚の島の 雨宿りかな

 

城跡の 夕暮れ近き 石積みに 咲く花揺らす 海からの風

 

 

木洩れ日のゆれるテーブルに

まどろむような時が置かれる

水平線は曖昧に空と重なり

海からの涼やかな風に言葉が途切れる

午後の日差しは木々の枝先からこぼれ

ハイビスカスが海に浮かぶ

珈琲の香りがただよう庭先に

夏の名残が彩る本部の丘

 

 

晩秋

 

柿の実を ついばむ鳥の 影長く 羽ふるわして 枯葉まい散る

 

道すがら つぶやく言葉 さまよいし 柿の実ふたつ 野辺の夕暮れ

 

やわらかき 夕日に染まる 柿の実の 陰映したる 白壁の路