卒業

 

 誰もいない閲覧室の窓辺で

三年間を思い返すかのように

書架にもたれて本を読む あなた

 蔵書印のインクの匂いと

思い出が語りかける閲覧室に

時は静かに刻まれていく

 やがて灯りが消されて

窓ガラスに映された微笑みを残し

扉は閉じられた

 窓越しの月明かりに浮かぶ

書棚に忘れられた 眼鏡

辛さを超えてきたあなたの

  明日は卒業式

 

 

 

春はまだ…

 

君が帰った閲覧室には

 ストーブの鼓動が取り残されて

遠いビルのネオンだけが華やぐ

夕闇がまもなく訪れた

 灯りが消された廊下には

月明かりが斜めに差し込み

足音だけが階段を駆け下り

誰もいない教室に吸い込まれていく

  ノートに綴られて

やがて忘れられていく

今日という一日