誰が植えたのだろうか
春を告げて咲きそろうその桜
ルビーのような小さな実をつけるのだが
あらかた小鳥に啄まれてしまう
歩道に落とされた実は
蟻たちが群れて、巣に運んでいく
やがて緑に包まれた枝には
虫たちが跋扈して
たくさんの穴をあけてしまう
それでも夏の太陽を浴びて
歩道に伸びた枝は
涼しげな日陰をつくり
木漏れ日の模様が風に揺れる
秋になれば、あでやかな紅葉もつかの間
道路わきに吹き寄せられて虫たちの隠れ家
木枯らしが枝を鳴らす頃には
霜に包まれて冬の眠りにつく桜の木
そして、また春が来て咲く桜を
この道を通った君は 覚えているだろうか